ちょっとした宮古語

ぴーっちゃがまぬ みゃーくふつ

ちょっとした宮古語 Vol. 3 「自己紹介(敬語)」in 皆愛方言

ちょっとした宮古語 Vol.3 「自己紹介(敬語)」in 皆愛方言を解説してみましょう。

【ポイント】

自分より目上の人に話すときに、相手の行動に対して尊敬語を使う必要があります。尊敬語を使わないと、失礼に聞こえてしまい、せっかく宮古語で話してみているのに、先輩にひどく叱られることもあります。幸いなことに、宮古語の尊敬語は日本語の尊敬語ほど発達していません。文の最後に来る動詞に尊敬を表す〈~まイ゜〉または〈~さまイ゜〉を加えるだけで、尊敬語が作れます。

●〈んざんが うーが〉(どこにいるの?)
●〈んざんが うらまイ゜が〉(どこにいらっしゃいますか?)

【会話】

ミガ:あんがが なーゆばー のーてぃが あイ゜ズぁまイ゜が?(おねえさんの名前は何とおっしゃいますか?)

京子:ばが なーゆばー 京子てぃだイ゜(私は「京子」と言います)

ミガ:あんがー んざぬ ピとぅが やらまイ゜が?(おねえさんのご出身はどちらですか?)

京子:ばやー んなーイ゜ピとぅ(私は皆愛出身です)

ミガ:あんがー いふつが ならまイ゜が?(おねえさんはお幾つですか?)

京子:ばやー ろくじゅー(私は六十歳です)

ミガ:あんがー んざんが うらまイ゜が?(おねえさんはどちらに住んでいらっしゃいますか?)

京子:ばやー んなーイ゜んどぅ うー(私は皆愛に住んでいます)

ミガ:すぐとぅーばー のーが しゅーらまイ゜が?(お仕事は何をされていますか?)

京子:ばやー ぱりゅーどぅ しーゆー(私は農業をやっています)

【語彙】

〈あんが〉 姉。おねえさん。先輩。年上の女性。年上の女性の呼びかけ言葉。
〈なー〉 名前。
〈のー〉 何。
〈あイ゜ズぁまイ゜〉 おっしゃる。〈あイ゜〉「言う」の尊敬語。
〈ば〉 私。助詞〈~が〉(~の、~が)としか使わない。
〈んざ〉 どこ。
〈ピとぅ〉 人。
〈やらまイ゜〉 でいらっしゃいます。〈やイ゜〉(~だ)の尊敬語。
〈ばやー〉 私は。〈ばん〉(私)の主題形。
〈んなーイ゜〉 皆愛(みなあい)。皆愛集落。
〈いふつ〉 幾つ。何歳。
〈ならまイ゜〉 お成りになる。〈なイ゜〉「成る」の尊敬語。
〈うらまイ゜〉 いらっしゃる。お住みになる。〈うー〉(いる。住む)の尊敬語。
〈すぐとぅ〉 仕事。
〈しゅーらまイ゜〉 していらっしゃる。〈っす〉(する)の進行尊敬語。
〈ぱり〉 畑。農業。
〈しーゆー〉 している。〈っす〉(する)の進行形。

【解説】

自分より目上の人に話すときに、相手の行動に対して尊敬語を使う必要があります。尊敬語を作るために、動詞に〈まイ゜〉を加えます。

●〈うー〉(うー)⇒ 〈うらまイ゜〉(いらっしゃる)
●〈あイ゜〉(言う)⇒〈あイ゜ズぁまイ゜〉(おっしゃる)
●〈なイ゜〉(成る)⇒〈ならまイ゜〉(お成りになる)

目上の人に対して、相手を指す言葉として〈あざ〉(おにいさん)または〈あんが〉(おねえさん)を使います。〈あざ〉は「兄」「目上の男性」などを意味し、目上の男性に使います。〈あんが〉は「姉」「目上の女性」などを意味し、目上の女性に使います。ちょっとした宮古語 Vol.1で見た〈ヴヴぁ〉(君)は同等や目下の人にしか使わないので、目上の人に対して言った場合は失礼な言い方になります。

●〈あざが なーゆばー のーてぃが あイ゜ズぁまイ゜が〉(おにいさん様の名前は何とおっしゃいますか?)
●〈あんがが なーゆばー のーてぃが あイ゜ズぁまイ゜が〉(おねえ様の名前は何とおっしゃいますか?)
●〈あざー んざんが うらまイ゜が〉(おにい様はどこに住んでいらっしますか?)
●〈あんがー んざんが うらまイ゜が〉(おねえ様はどこに住んでいらっしゃいますか?)

呼びかける際にも〈あざ〉や〈あんが〉を使います。

●〈あざ、ならーし ふぃーさまち〉(おにいさん、教えてください)
●〈あんが、ならーし ふぃーさまち〉(おねえさん、教えてください)

〈あざ〉の他に、〈すぅざ〉(兄。目上の男性)という言い方もあります。〈あざ〉より親しみの度合が低いので、親しくなってきた人に対しては〈あざ〉を使うと良いです。